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Merry Christmas & happy new year

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今年ももう終わりです。
年々、一年が早く過ぎるような気がします。
忙しくしているからなのか、暇にしているからなのか、よく分かりませんが・・・。

まあでも、来年は景気よく行きましょう。
と言うことで、今年は「有頂天家族(著:森見登美彦)」から抜粋です。
(今後読む予定の人は、見ないで下さいね。)




「懐かしいなあ!」
次兄が風を切って走りながら言った「これだ。これだった!」
私と弟は座席に膝をつき、窓から身を乗り出して手を振り回し、「やっほう」と叫んだ。
「ああ、どうしよう矢三郎。我が一族の頭領、兄さんの絶体絶命の危機だというのに、俺はなんだか妙に面白くてしょうがないよ。ふざけたことだなあ」
「かまわん、走れ兄さん。これも阿呆の血のしからしむるところだ」
私は言った。 「面白きことは良きことなり!」
ふいに偽叡電が寺町通をくねくねと蛇行し、軒先すれすれをかすめて雨樋を撥ね飛ばし、通りに面した飾り窓をあわや割りかけた。
「どうした兄さん、大丈夫かい?」
次兄はしばらく物も言わずに車体をくねくねと揺さぶっていたが、やがて鳴咽の混じった声で言った。
「父上の最後の言葉はそれだったよ。父上はあの夜、俺にそう言ったのだ。あれだけ長い間、井戸の底に籠もっていて思い出せなかったことだが、今の今、ようやく思い出した」
次兄の全身で阿呆の血が沸き返るのが分かった。心臓の鼓動を聞く思いがした。
「面白きことは良きことなり!」
高らかな次兄の宣言に、私と弟も唱和した。


「有頂天家族(著:森見登美彦)」より抜粋
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